橘田尚之 展  KITTA Naoyuki Exhibition 2013.9.12-9.29


蛇笛       2013  h130×w194cm  酸化皮膜したアルミニウム、アクリル、キャンバス
 

作家コメント

薄いアルミ板に酸化皮膜を施して作るわたしの立体は、端的に言うと、紡錘形の殻だ。そのため視線はその表面に留まり、そこにあるドローイングや斑紋やねじれ等に誘われて滑走する。視線が風のように紡錘形や翼の形を通り抜けるとき、浮力を感じるのではないかと思っている。(注1)
最近、室内の風が立体にわずかに浮力を与えているのではないかと思い、箔を作品の表面にかざして、風を探した。箔は少しばかり揺れたり、振動したり、全く動かなかったり、場所によって様々であった。こうして風を探しているうち、ある光景を思い出した。子どもが手のひらを先生の口元にかざし、次に自分の口元に手のひらを持っていく姿である。これは先生が50音を発音するときの息を手のひらで感じ、自分でも声をだして同じような息の形を手のひらに作る練習をしているところだったのだ。息は声の素材でもあるとそのとき改めて思った。(注2)
立体上のささやかな風は浮力を生みそうもないが、息のように声の形になることがあるかもしれない。風が立体の表面上で声に変わるさまを想像している。

注1 美術手帳 1987.8 作家訪問、編集部によるインタビュー「橘田尚之-アルミが飛ぶとき」
注2 あいうえお50音を使った作品となった(1973.10.ときわ画廊個展)

 

会場風景