前田哲明 MAEDA Noriaki Exhibition 2018.5.24-6.10
この数年間ドローイングから作品を作るというプロセスを見つめ直すことが自分を解放することに繋がった。それは、従来自分が続けてきたイメージを空間のなかに忠実に再現するためのドローイング、つまり作品のプラン的なドローイングを出来るだけ排除することから始めなければならなかった。イメージを特定することなく、いきなり紙面にあらわすドローイングを続けてみることにした。その積み重ねは、いわば、譜面なしの制作、つまり、3次元の立体作品を空間にドローイングするような感覚というべきものであろうか。それは、繰り返し描き続けるドローイングのような感覚で空間に表現することに他ならない。その無意識な行為を俯瞰するもう一人の自分を通しても、そこに分からない部分は無限に存在している。しかし、そのなかから生まれる形は、時として自然界に存在する何かのイメージを共有することも多く、この後どうなってしまうのか自分ですら予測のつかないものでもある。この終わりのない作業をすすめながら、自分のイメージのなかで飽和状態にさしかかった時点で、ドローイングを空間のなかに誘発的に描きはじめるのかもしれない。
この数年間行ってきた空間にドローイングするようなスタンスでの制作をしばらく続けてみるつもりである。それが、たとえ彫刻という概念から外れていても、いま私を強く惹きつけるものがあるから。
2018年4月 前田哲明