松浦寿夫 〈今日の天気 Le temps qu’il fait〉 MATSUURA Hisao Exhibition 2022.10.20-11.13
今日の天気、あるいは酷暑のさなかで
「天気」と題された西脇順三郎の詩の冒頭に「覆された宝石」という語群が置かれている。それは朝を形容する語群を形成している。この散乱するいくつもの宝石はそれ自体としての輝きを発散しながら、また同時に予期せぬ仕方で生じる他の隣接する宝石との間に可変的な結合関係を備えている。そして、目覚めの直後の意識が朝という時間的な拡がりの中で、統覚作用の介入の手前で、見出す光景は無数の事物の散乱状態とその可変的な接続関係のもとで、つねに新しさの様相を呈している。
あるいは、ここに、以下のエミリー・ディキンソンの謎めいた二つの一節をおいて見ることもできるだろうか。それが何を示唆しているのかを私には理解できないとしても。
形こそ似ていても わたしたちの新しい手は 砂で練習して もう 宝石の策略を学んでいる (320) そして、 夏の日を繰り返すことができる者は 夏より偉大だ たとえ人間のなかで一番小さくても (307)
松浦寿夫