千崎千恵夫〈それーit〉SENZAKI Chieo Exhibition 2019.11.7-11.24
エベレストなど8000メートル級の山々は、地球の中で宇宙に一番近い場といった言い方もあるが、砂漠も又、そのような場だと言えるかもしれない。降雨量が少なく、乾いて砂嵐など異変のないとき以外は、地平と青い空ははっきりと分かれ、夜ともなればその空は一面の星々で埋め尽くされる。
一方、照葉樹林帯に位置する我々の住む場は、水分豊富で、時に霞で覆われる。樹々の間からは、生命の成長を感じることが出来、向こう側になにがあるのかさえ分からなくなる。我々が見ることのできる空、そしてその向こうの広大な宇宙と、深い森の樹々の根元で息づく極小の生命の萌芽との関係は、私を接点として上下に相似形をなして広がっている。極大と極小が一つの流れとなって、私を通して位置を持つことになる。その、目で見ることの出来ない、エネルギーとでもゆうべき形は、言葉で表現することが難しい。
ここでは、ただ「それ」という言葉にとどめたい。この、様々な姿で現れる形を感じ取る目の背後には、二重写しのように日常と非日常がまざりあう、抽象的な響き合いが存在する。
千崎千恵夫